環礁?プカプカ?

環礁とは?

  サンゴは、刺胞動物門に属する動物である。サンゴの内、体内に褐虫藻という藻類を共生させているものを、造礁性サンゴと呼ぶ。造礁性サンゴは、褐虫藻から光合成産物を供給されることよって、石灰質の骨格を成長させており、褐虫藻との共生のために、熱帯・亜熱帯の比較的浅い海域に生息する。造礁性サンゴが自らの骨格で、長い時間をかけて地形を創り出した際には、その地形のことをサンゴ礁と呼ぶ。サンゴ礁の主なタイプとして、陸地と接した裾礁、陸地との間に深さ数10mの浅い海すなわち礁湖(ラグーン)がある堡礁、陸地がない環状の環礁という3種類を挙げることができる。

  環礁は、海面下に沈降する火山島の上に、サンゴ礁が積み重なって形成される。環礁のサンゴ礁のうえに、サンゴや石灰藻、有孔虫、貝など有孔虫などの死骸、つまり石灰質の礫や砂が堆積すると、海面よりは高いが低平な州島が点々と礁湖を取り囲むように形成される。世界には500ほどの環礁があると言われており、太平洋にはその内400が分布している。中部太平洋にあるマーシャル諸島共和国や、キリバス共和国、ツバル、インド洋のモルディブ共和国のように、国土のほとんどが環礁の州島からなる国もある。ひとが居住する環礁、すなわち有人環礁には、相対的に他島嶼・大陸から近く、ひとやものの行き来が激しいものもあれば、反対に他島嶼・大陸から遠く、ひとやものの行き来が限られるものもある。前者の環礁は、人口とその密度が高まった場合には都市的環礁(urban atoll)と呼ばれることもあるが、数としては後者のような孤立性の高い環礁が多く、本研究ではこれらをリモート環礁(remote atoll)と呼んでいる。


左図の出典:日本サンゴ礁学会ホームページ「サンゴ礁Q&A」

プカプカとは?

 プカプカ(Pukapuka)は、オセアニアのクック諸島(Cook Islands)という国に所在する環礁の名前である。オセアニアは、オーストラリア大陸を除くと、慣習的にメラネシア、ミクロネシア、ポリネシアの3つに分けて捉えられ、クック諸島はポリネシアの中央あたりにある。クック諸島は周辺の島嶼と同様に、ヨーロッパの植民地化に翻弄されてきたところで、1888年にイギリスの植民地として統治されるようになった。1901年には、イギリスの植民地だったが徐々に独立性を強めていったニュージーランドが統治するようになり、南北に拡がる島々をまとめて、正式にクック諸島と名付けた。世界大戦を経て1960年代には独立の機運が高まり、1965年に内政自治権を獲得して、ニュージーランドとの自由連合という形態に移行した。国連未加盟国ではあるが、アメリカやEU、中国、そして日本等と外交関係を締結しており、多くの場面において実質的に独立した国家として振る舞う。人口は約15,000人、典型的な多島国家で、主に北部諸島として主に6の環礁、南部諸島として主に7つの火山島と2つの環礁が数えられる。南部諸島の南部にある火山島ラロトンガ島に首都アヴァルアが所在し、人口の7割以上がこの島に居住している。

 プカプカは北部諸島の6の環礁のひとつで、現地住民の間ではテ・ウル・オ・テ・ワトゥ(Te Ulu o te Watu)の名で知られる。ラロトンガ島から1,100km以上離れ、直近の大規模島嶼のサモアからも640km以上離れており、国内でも「非常に遠い」離島のひとつと認識されている。陸域面積は約1㎢、人口は現在は500人に満たない。プカプカと他島・大陸を繋ぐ定期的な航路・空路はないが、年に3~4回ほど、ラロトンガ島と北部諸島を結ぶ貨客船が運航されている。環礁は3州島、すなわち北の主島ワレ(Wale)、南東のモトゥ・コー(Motu Kō)、南西のモトゥ・コタワ(Motu Kotawa)を擁している。なお、行政としては、プカプカ/ナサウ島自治体(Pukapuka/Nassau Island Government)が、プカプカ環礁とそこから約90km南方の単独リーフ島のナサウ島を併せて管轄している。