進捗状況

2024.06.08

2024年度第1回「環礁と環境」研究会のオンライン開催 with 山崎敦子先生

 山崎敦子先生(名古屋大学大学院環境学研究科)に、「中世の気候異常期におけるエルニーニョとリモートオセアニアへの人類拡散」という題名でお話頂きました。

 山崎先生を代表として、現在、同題名の科研・基盤Bの研究プロジェクトが実施されており(KAKEN — 研究課題をさがす | 中世の気候異常期におけるエルニーニョとリモートオセアニアへの人類拡散 (KAKENHI-PROJECT-22H01313) (nii.ac.jp) )、お話ではその進捗状況をシェア頂きました。このプロジェクトは、西暦1000年頃にポリネシア人が突如、リモートオセアニアに向けてさらなる拡散を開始したことに関して、未だ多く残る問題に取り組んでいます。古代ポリネシアにおいて、ひとは、いつ、どこへ、どのように、なぜ、移動したのか。この謎に迫るためには、古気候を復元し、航海を支える海流や風向きといった海洋環境や、人類が生活するための島嶼環境を明らかにすることが肝要です。

 研究会では山崎先生はまず、このような観点から既に蓄積されている先行研究について、重要な要点を網羅的にご説明下さいました。その上で、それらの先行研究は手法や指標が異なるために、年代観がずれていたり整合性に欠ける部分があるといったご指摘をなさいました。さらに、先生方が昨年、今年と仏領ポリネシアのボラボラ島、サモアのウポル島で実施したサンゴ骨格の採取と分析について、具体的にご紹介下さいました。サンゴ骨格には、週~月の単位での海水の水温・塩分濃度や栄養塩の濃度が刻まれていることから、それを分析することで、より精度の高い古環境、古気候の復元が可能になるそうで、オセアニアの人間拡散史という壮大な歴史の解明に対して、大きな一助になることが期待されます。今後の進捗もまた非常に楽しみです。

 質疑応答の時間も大いに盛り上がり、異なる専門を持つ研究者の間で有意義な意見交換ができました。2つの研究プロジェクトの関心の重なりと補完関係にある部分を確認することもできました。

(以上、文責は深山にあります。)




この記事を書いた人
深山 直子 (研究代表者)
Naoko Fukayama

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